見本 まんまる月夜のねがいごと

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表紙

まんまる月夜のねがいごと

文:如月みめい
絵:伊原久美子

りょうかちゃん

しょうがっこう にゅうがくおめでとう!
おともだち たくさんつくってね

ちばのおじさん・おばさんより

たさきりょうかちゃんが そのネコと あったのは  ある日の 夕方のことでした。
はい色で くろいもようの、みどりの目の ネコ。
「わぁ、かわいい! おいでおいで、こわくないよ」
はい色ネコは ニャアとなくと、 りょうかちゃんに からだを すりよせました。
りょうかちゃんは しばらく そのネコと あそんでいましたが そのうち、
空が オレンジ色から むらさき色に なってきてしまいました。
「もっとあそびたいね。ね、ウチにこない? はい色ネコさん」
ニャア、ニャア、ニャ―ア
はい色ネコは うれしそうに へんじをしました。
りょうかちゃんは はい色ネコと いっしょに 家に かえることにしました。

「ただいま!」
りょうかちゃんは 家につくと、すぐに だいどころに いきました。
「あのね、おかあさん。このネコ・・・・・」
「だめよ」
おかあさんは はい色ネコを見るなり 言いました。
「おかあさん、ネコはにがてなの。もとのところに かえして らっしゃい」
「おねがい、ちゃんと めんどうみるから」
りょうかちゃんは 一生けんめい たのみましたが、 おかあさんは こわいかおで 言いました。
「だめ、と言ったら だめです! かえしてらっしゃい!」
「・・・・・・はい」
りょうかちゃんは しかたなく はい色ネコをつれて 家から 出ました。

ニャア、ニャア、ニャ―ア ねえ、どうしたの?
ぼくは りょうかちゃんと いっしょにあそべないの?
はい色ネコは そう 言っているみたいで、りょうかちゃんは なき出しそうに なりました。
「ごめんね、おかあさんが だめだって」
はい色ネコは ビー玉みたいな まんまるい目で  りょうかちゃんを 見上げていましたが、
やがて はしっていって しまいました。
もっと あそびたかったな。
りょうかちゃんは、ごはんの時も おふろの時も ずっと かんがえていました。
ネコに なりたいな。
そしたら はい色ネコと ずっといっしょに あそべるのに。
きれいな まるい お月さまを 見ながら そう おもっている  うちにりょうかちゃんは ねむってしまいました。

りょうかちゃん、おいでよ」
どこかで 男の子の こえがします。
「おいでよ、いっしょに あそぼう」
「だあれ? こんな 夜中に」
そう 言ったつもりだったのに
りょうかちゃんには こう きこえました。
「ニャア、ニャ―ア」
ええっ! どうして?
りょうかちゃんは あわてて おきあがって  そして とび上がるくらい びっくりしました。
うでも おなかも 足も、かおも まっ白な、ふんわりとした、毛で おおわれていたのです。
うそ! どうして? そう 言おうとしても、口から出るのは
「ニャア、ニャア」
長いしっぽと ヒゲ。耳だって 頭のてっぺんです。
ネコ!
りょうかちゃんは まっ白な子ネコに なってしまったのです!

りょうかちゃん おいでよ、いっしょに あそぼう」
外から、また 声が きこえてきます。
見ると、下の通りに 夕方の はい色ネコがいました。
りょうかちゃんは ベランダに出ると、おそるおそる  手すりの上に とびのりました。
ひらり。
それが とても かんたんに できるのです。
つぎは 雨どいへ、そして こんどは きのえだに りょうかちゃんは 
ひらり、ひらりと じょうずに とびうつりました。
やっと 地面につくと、はい色ネコが はしってきました。
「いっしょにあそぼうよ! りょうかちゃん
「うん!」
りょうかちゃんと はい色ネコは はしりだしました。
いよいよ ぼうけんの はじまりです。

夜の道は だれもいません。
おまけに りょうかちゃんは 小さなネコに なってしまったので 
電しんばしらも 自動はんばいきも、とても 大きく見えます。
でも、お月さまのあかりと はい色ネコの クロのおかげで 
りょうかちゃんは ちっとも こわくありませんでした。
ブロックの へいの上で かけっこをしたり よそのおにわに しのびこんで 犬と お話したり
何もかも はじめてのことばっかりで、りょうかちゃんは たのしくて しかたありません。
ニひきのネコは いっしょに 道をこえて、車の下をくぐり、へいの上をわたります。
「つぎは、どこに いくの?」
「ぼくの 一番すきな所だよ」
クロは うれしそうに 長いしっぽをふりました。

りょうかちゃんと クロが やってきたのは あき地の 大きい木の 下でした。
「この木に のぼるの?」
「うん。でも ぜんぜん こわくないよ。あとから ついておいでよ」
クロは そう 言うと、一番ひくいえだに とびのりました。
りょうかちゃんも あわてて そのあとに つづきます。
上へ、上へ  ずいぶん たくさんのえだを あがっていったら、とつぜん 目の前が あかるくなりました。
大きな まるい お月さま。
たくさんのほし、小さな 家のあかり。
「きれい!」
「すごいだろう?」
クロは とくいそうに 言いました。
「あぶないから、のぼったらダメって おかあさんに しかられるんだけどね」
りょうかちゃんは びっくりしました。
クロは のらネコだとばかり 思っていたのです。

クロの家は あき地のすみに すててある こわれたテーブルの したでした。
「ただいま!」
クロは 元気よく言いましたが、家には だれも いませんでした。
「あれ? いない。どこに いったんだろう?」
「お出かけなの?」
「うん。弟のトラも いない。へんだなあ?」
クロと りょうかちゃんは、毛布の下や エサおきばも さがしましたが、やっぱり だれもいません。
「そうだ! 思い出した!」
クロは 急に 大きい声を出しました。
「今日は 集会だったんだ! すっかり わすれてた」
「集会って?」
「こうえんの中で あるんだ。ぼくたちも いこう」
クロと りょうかちゃんは 急いで こうえんに むかいました。

こうえんに ついたとたん、りょうかちゃんは キャアと さけび出しそうに なりました。
あおい目、みどりの目、ちゃいろの目、きんの目、かたほうずつ 色のちがう目。
まっくらの中、たくさんの 目だけが ピカピカ 光って いたからです。
よくよく 見ると、それは ぜんぶ ネコなのでした。
水のみ台の上では、長老ネコが 一生けんめい はなしています。
クロと りょうかちゃんが みんなの 一番うしろに すわると、
クロと同じ きれいな はい色ネコが やってきました。
「クロ!どこに いってたの?だめじゃないの!」
「ごめんなさい、おかあさん」
クロが しょんぼりしてしまったので、りょうかちゃん
あわてて おかあさんネコに 言いました。
「あの、わたしの家まで むかえに きてくれたんです」
「あら、そうだったの」
おかあさんネコは りょうかちゃんを見ると ニッコリしました。
「ごめんなさいね、この子が つれまわして」
おかあさんねこは、クロの 毛づくろいを してあげました。

うちのおかあさんに そっくりだな、と りょうかちゃんは 思いました。
すぐおこるけど、でも とってもやさしいの。
りょうかちゃんは、たいへんなことを 思い出しました。
どうしよう! もう いえには かえれない。
おかあさんは ネコが にがてなのに どうしよう、どうしよう! どうしたらいいの?
今まで あそぶのに むちゅうで、そのことを すっかり わすれていたのです。
りょうかちゃんは なき出してしまいました。
「どうしたの? りょうかちゃん
クロと おかあさんネコは びっくりして ききました。
りょうかちゃんが なきながら わけを話すと、
おかあさんネコは りょうかちゃんを やさしく なでてくれました。
「だいじょうぶ。みんなに そうだんしてみれば、きっと だれかが 人間に もどる方法を しってるわ」
「そうだよ、りょうかちゃん。元気をだして!」
クロも はげましてくれたので、りょうかちゃんは ちょっとだけ 元気になりました。

「あー、では<車に ひかれない 道の わたりかた>は、これで おわる。ほかに 何かないかね?」
長老ネコは、目を しょぼしょぼさせて いいました。
「はい」
クロは 前に出ました。
「クロか、ちこくして きおったな。ちゃんと 見えておった。で、なにかね?」
クロは りょうかちゃんに おこったことを 話しました。
「うそだろ?」「すごーい!」「しんじられないよ」
みんなは ヒソヒソと ささやいています。
「みんな だまれ! クロが はなしとるんじゃ! それで、どうしたいんじゃね? りょうかちゃん
長老ネコは りょうかちゃんに やさしく話しかけました。
「あの・・・・・・人間に もどりたいんです。もどる方法を おしえてくれませんか?」
りょうかちゃんは おかあさんネコに ピッタリ くっついたまま おそるおそる 言いました。
「みんな きこえたかね? 何か しっているものは すみやかに 言うように!」
長老ネコは みんなを 見わたしました。

「しらないなあ」「きいたことないよ」
みんなは また ささやき合っています。
だれも 何も しらないのでしょうか?
「心配ないよ、りょうかちゃん
クロは また なき出して しまいそうな りょうかちゃんに やさしく 言いました。
「長老、何か ごぞんじないんですか?」
おかあさんネコは ききました。
「うーん・・・ちょっとまてよ、ミー。今 思い出してる ところじゃ」
長老ネコは かんがえこみました。
「そうだ! 思い出したぞ! 月じゃ! りょうかちゃん、 ネコになりたい、とか 思わなかったかね?」
「思いました。クロと あそびたかったから・・・」
「ねる前に 月を 見たろう?」
りょうかちゃんは うなずきました。
「思い出しましたよ、長老!」くろいネコが 言いました。
「水に、月を うつすんですよ」
「それに 花よ!」ミケネコも 立ちました。
「バラの花だ!」シャムネコも さけびます。
「みんな、しっていたら 早く言わんか!」
長老ネコは ムスッとして いいました。

水のみ場の 池に、こうえんの生けがきから とってきた バラの花を たくさん うかべます。
池のまわりを おおぜいのネコたちが グルっと とりかこんでいます。
りょうかちゃんは ドキドキしながら、池のまん中の  ふん水の上に たちました。
おまじないの はじまりです。

「まあるいまあるい おつきさま、なんでも しってる なんでもみている おつきさま」

ネコたちは 池のまわりを グルグルとまわりながら 声を そろえて 言います。

「ぼくらのねがいを きいてください、おつきさま」

水に うつる月が キラキラと かがやきはじめました。

「おつきさま、おねがいします、おつきさま」

光が どんどん広がって、池の上が 白くひかります。
みんな 目をまるくして、そのようすを 見まもっています。

白いネコ、くろいネコ、ちゃ色のネコ、ミケネコ、 トラネコ、シマネコ、ブチネコ
たくさんの ネコが まわります。
クロも おかあさんといっしょに まわっています。

りょうかちゃんを もとのすがたに もどしてください、おつきさま」

りょうかちゃんは だんだん ねむたくなってきました。
クロ、また いっしょに あそぼうね。
すごくたのしかったよ。おうちに あそびに いくからね。

「ニャア、ニャア、ニャ―ア、ニャ―ア、ニャア、ニャア」

ネコのなき声が とおくから きこえてきます。
バラの花の いいにおいがします。
りょうかちゃんは ゆっくりと 目をとじました。

朝になりました。
りょうかちゃん! おきなさい!」
おかあさんの 声がします。
「はあい、おかあさん」
りょうかちゃんは へんじをして、そして 
あわてて おふとんから出て、かがみの前に たちました。
いつもの パジャマをきた りょうかちゃんが うつっています。
ゆめ? ネコになったことも、クロとあそんだことも?
りょうかちゃん、早く!」
「今、いきまーす!」
いそいで きがえて、へやから 出ようとした時・・・・・・
バラの花びらが、ひらりと 一まい、りょうかちゃんの  かみの毛から おちました。
ゆめじゃなかった、やっぱり。
りょうかちゃんは うれしくなりました。
クロに 会いにいこう。
あき地のすみの こわれたテーブルの下に きっと、クロは そこにいます。
りょうかちゃんは 元気よく へやのドアを しめました。

(おわり)

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